最後に・・・
下鴨神社 糺(ただす)の森
スイスからの女子留学生が、何年もの滞在後だろう
京都で最も好きなところはどこですか?
と聞かれて、金閣寺でも、嵐山でもなく
糺の森・・・と答えたそうだ。
その話を聞いたとき、当たり前かも知れないが
日本人以外でもこの国が古来大切にしてきた感性を持っている・・
ことに驚いた。
必ずしもスイスのアルプスの麓で生まれ育ったからというわけではないかも知れないが
森や、自然が働きかけてくるもの に気付いているのだろう
初めて下鴨神社を訪れたとき、
ちょうど新緑の頃だったと思う
森が続く参道に入った途端・・
自然と気に包まれた。
言ってみれば、木々が芽吹いたり、葉を展開したりするエネルギーのような・・
新緑の頃に行ったからかもしれない。
糺の森は京都盆地の東北部、鞍馬や貴船からの賀茂川(合流部より上は賀茂川、下流は鴨川と表記される)と 大原や八瀬からの高野川 の合流部に南北に長く広がっているが、一般の神社の森に比べて明るい感じがする。鬱蒼(うっそう)としたという表現より、爽やかな感じを受ける。京都盆地は冬場に冷え込んで寒暖差が激しいことで有名だが、大きな川の合流部ということもあって、一般の社寺林に多い常緑照葉樹よりも、落葉広葉樹が多い。特にムクノキやケヤキ、エノキなどのニレ科の樹木が多くて、それがこの森を独特のものにしているのかもしれない。
もちろんシイやカシやクスノキなどの照葉樹の古木も多く見られるが、戦前の室戸台風と翌年の大水害の被害を受けた後、森内に数千本あった樹木は97本まで激減したらしく、その後の植栽などの努力もあって、数千本に至る現在の姿になっている。
糺の森財団 の 紹介動画
こうやって振り返ってみると、なにか霊感の鋭い人間のように見えるかもしれないが
そんなことはない。
糺の森はその後何度も訪れているが、初めての時のように気を感じることはない。
立山や白山のような霊峰、日本アルプスの峰々、北海道や東北の山々へも登ったり縦走したりしたが、今まであげてきたような気を感じたことはない。
ただ、森へゆけば爽やかな時間を過ごせるし、山々に身を置けば穏やかな気持ちになる。
いつまでも続くコロナ禍の中で、また北海道、日本海側に降り続く大雪もあり、ほとんどまともな外出ができない日々が続いている。
けれど、今年もやがて春になり、山や森や渓流に出かけることができれば、植物や自然はいつものように変わらず迎えてくれることと思う。
ただ過ぎればよい・・ではなく
これだけ地球規模の人類全体のことが起こっているのだから、少しでも次代の人たちがのびのびと生きていけるように考えるきっかけにならぬかと思う。