「暑さ寒さも彼岸まで」…昔の人はすごいなぁ…と感心するが、十数年前にその言い伝えが崩れた時はほんとうに驚いた。近年では春分を過ぎても厳しい寒さが続き、秋分を過ぎても残暑が続く。春と秋が短くなり、夏と冬が長くなってきたような気がする。
毎年、秋のお彼岸に律儀に開花してきたヒガンバナも、今年はさすがに残暑の影響か、開花が遅れていて、未だ蕾のものも多い。秋らしくなって、墓廻りや、田の畦に急に咲き出す紅色は、ちょうど季節の変わり目にあたってきたように思うが、残念な限りだ。
以前からヒガンバナの開花要因は考えていたが、おそらく温度だろうと推定しただけで、詳しく知らなかった。
今回調べてみると、以下の説明があった。
1. ヒガンバナは普通9月中・下旬に開花し、開花後に葉を地上に展開させ、翌年の5月中・下旬に葉が枯死し、夏を越します。一方、球根内での花芽の分化・発達についてみますと、花芽分化は葉が生育中の4月下旬に始まります。葉が枯れた後の6月中旬に雌ずい形成期、8月下旬に花粉形成期と発達して、9月中・旬に開花します。
2.冬期、最低20℃程度の加温室で栽培すると夏にも葉を展開させて常緑性になります。しかし、このような条件下では、花芽は分化しません。このことから、ヒガンバナの花芽分化には低温遭遇を必要とし、低温はバーナリゼーションとして作用しているようです。
3.花芽分化および雌ずい形成までの発育適温は25~30℃付近にありますが、分化・発育の可能な温度範囲は10~30℃で広いことから、自然条件下では温度が上昇に向かう4月下旬から花芽分化が始まるようです。
4.雌ずい形成期に達すると、それまでの発育を促した高温(25~30℃)ではかかえって発育が抑制され、適温は20℃付近に低下します。自然環境下での開花が9月中・下旬になることや関東での開花が関西より10日ほど早くなるのは、この発育適温の低下によるものといえます。
5.以上のように、ヒガンバナは温度(特に地温)を感じて花芽の分化および発達が進行しているようです。また、花芽分化に対して低温はバーナリゼーションとして作用しているようです。
森 源治郎(大阪府立大学大学院生命環境科学研究科)
桂浜のヒガンバナ
ここのヒガンバナの群生も、SNSのためか、数年前から多くの人が訪れるようになった。ヒガンバナの鱗茎には毒性があるが、水でよく晒すと抜くことができる。それゆえにヒガンバナは救荒食や、あるいはモグラなどを防ぐ意味で昔から田の畦に植えられた。琵琶湖岸にある桂浜のものは、やはり以前の田の名残か、あるいは琵琶湖岸に流れ着いたかのどちらかだろう。ここのヒガンバナは樹々の下で群生しているが、彼岸過ぎから来春まで葉を展開するため、落葉後の光を受けることができ、また冬の積雪も湖岸には比較的少ない。
一株だけ白花の個体があった。以前、福井の三方でも見たことがあるが、調べてみると
・・が周囲に鍾馗水仙も見あたらず、通常は鱗茎で増えることを考えるとよくわからない。ただ、この白花は周囲とは少し離れて一株(二本だが)だけあった。
ヨメナ(キク科)
ヒガンバナの群生地を歩いていると、大きなサヤが落ちていた。もとの木はと、見てみると羽状複葉。
・・・サイカチの木があった。
湖岸にサイカチがあるのは知っていたが、湖西で気付いたのは初めてかと思う。昔からサヤをお湯や水につけてシャボン(石鹸の代わり)に使われた木で、東北などには古木が多いと聞く。