カキツバタ

カキツバタは琵琶湖岸の内湖にもあり、各地で見かけるが、箱館山の平池(だいらいけ)は標高500mくらいの林間の池で、ここでは幾分薄暗い静寂な佇まいの中に薄紫の花が連なり、落ち着いた独特の雰囲気を醸し出している。カキツバタはやはりここがいいと思う。最近は多くの人に知られるようになり、また鹿の食害でかなり個体数が減少したが、池の中洲のような場所に生育しているために、池が堀の役目を果たし、ここだけは昔の姿をとどめている。f:id:Jiroviolet:20170610213708j:image

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中央に赤く見えるのはレンゲツツジ

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向こう岸に黄色く見えるのはサワオグルマ

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 いずれアヤメかカキツバタ・・・

開花時の外花被片(一番外側の花弁)を見れば判断できる。

アヤメ 外花被片に文目(模様、色合い)が現れる

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カキツバタ 外花被片に白の条線が入る

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ハナショウブ 外花被片に黄の条線が入る

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それゆえ、ハナショウブ(ノハナショウブを園芸化したもの)には必ず黄色の条線が残っている

 

なおショウブ(菖蒲)は五月(旧暦)に香りがいいために風呂に入れるが、ノハナショウブとは全く異なるサトイモ科(新体系ではショウブ科)の植物でアヤメ科のような花は咲かない。

 

白花のアヤメ(野生種)

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キショウブ

こちらは帰化

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平池畔のミズキ(ミズキ科)

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イトトンボ

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初夏の湖岸Ⅱ

群生はせず目立つこともないが、初夏の湖岸には独特の花々が咲いている。せいぜい10センチくらいのものも多く、よく見ないと気付かなかったりする。

マンテマ(ナデシコ科)

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初めてこの花に気付いた時はよくまあこのようなきれいな花が‥と驚いた。江戸時代に園芸種として入ったものが野生化したようだが琵琶湖岸には普通にある。

このような淡い色のものもある。

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キキョウソウ(キキョウ科)

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この花もマツヨイグサと同じく下から徐々に咲き上がっていくので、ダンダンキキョウともいう。

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マツバウンラン(オオバコ科)

芝生などに咲くこの花は気付いている人は多いかと思う。

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新分類体系でオオバコ科になっている。わけがわからない。

マメグンバイナズナアブラナ科

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コバンソウ(イネ科)

この植物は群生する

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アメリカネナシカズラヒルガオ科)

発芽時には根があるが、すぐに他の植物に絡みついて寄生する

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ツボミオオバコ(オオバコ科)

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ドクゼリ(セリ科)

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食用のセリよりはずいぶんと大きいので一度見れば間違うことはない

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ヒルガオヒルガオ科)

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こちらは一般のヒルガオ

タチスズシロソウ(アブラナ科

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この野草こそ言われないと見落としてしまうような細い目立たぬ植物だが、貴重な絶滅危惧種である。ごく限られた海岸や湖岸に見られる。

 

 

初夏の湖岸

5月の下旬になると、琵琶湖岸では一斉に初夏の花々が咲き出す。マツヨイグサは湖岸のいたるところで見られるが、今津浜にはかなりの規模の群生が現れ、湖岸一面が黄橙色になる。それと同時にハマヒルガオが岸辺を覆い、淡桃色の絨毯(じゅうたん)が色を添える。ここの群生はほとんどの人は知らないと思う。

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f:id:Jiroviolet:20170607073501j:imagef:id:Jiroviolet:20170607073530j:image

大正12年の牧野富太郎の文章です。

『夕方にたくさん咲いた様は、あたかも月華の流るるがごとし…(中略)花が開
き、かつ香りを漂わせば(中略)蛾が得意げに花間を飛び回り駆け回り、出雲の
神様の役目をつとめ、一場所で何十組の結婚が行われ、これが毎晩続くのであ
る。おめでたいことである。そしてこの媒酌者へのお礼はあらかじめ備えられた
る花中の蜜だ。さあ、それからできることできること、その子(種子)がウヨウ
ヨと育ち、日ならずしてその家(果実)から生まれ出て地上へ散落する…」「明
治17、8年ごろには東京ではただわずかに品川辺の鉄道の土手に少々あったくら
いであったが、今は日本国中に広まり諸所で見受けるようになった…』

夜咲き植物…という言い方しかないのかと思うが、夕方に蛍光とも思える黄色に咲き出して翌朝に(昼頃までは咲いている)橙色になって萎む。それを一花づつ繰り返して上に登っていく。

マツヨイグサアカバナ科

ツキミソウ

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同じ仲間にオオマツヨイグサ•アレチマツヨイグサ•メマツヨイグサコマツヨイグサなどがあるが、マツヨイグサコマツヨイグサ以外はあまり花が橙色にならない。最近はヒルザキツキミソウアカバナユウゲショウもよく見るようになった。

ハマヒルガオヒルガオ科)

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本来は海岸の砂浜に群生する海浜植物だが琵琶湖岸には分布するf:id:Jiroviolet:20170607081819j:image

他のヒルガオと異なり葉は腎円形f:id:Jiroviolet:20170607081835j:image

初夏の湖岸Ⅱに続く…

 

 

 

 

余呉湖畔散策

琵琶湖の北にある周囲7㎞の余呉湖は鏡湖とも呼ばれ湖面が穏やかなことが多い。賤ケ岳合戦の舞台であり、天女の羽衣伝説の伝わる静かな湖である。ちょうど初夏の花が咲いていたが、蔓性の植物の花が多く目についた。

余呉湖南端より北方向

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ウツギ(アジサイ科)

いたるところウツギ真っ盛りである

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ムラサキツメクサマメ科

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イモカタバミカタバミ科

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ヒメコウゾ(クワ科)

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コアジサイアジサイ科)

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テイカカズラキョウチクトウ科

キョウチクトウの花を見た人は納得する

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 ヒシ(ヒシ科)

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 デワノタツナミソウ(シソ科)

ホクリクタツナミソウの可能性あり

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ヤマツツジツツジ科)

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サワグルミ(クルミ科)

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オニグルミ(クルミ科)

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サワグルミとノキシノブ

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新羅崎の森

シイノキが多い

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菊石姫伝説の蛇の枕石

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ヒルガオヒルガオ科)

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アサツキ(ヒガンバナ科

新分類体系でヒガンバナ科になっている

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天女の羽衣伝説の柳

アカメヤナギ(ヤナギ科)

余呉湖周辺は伝説が多い

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スイカズラスイカズラ科)

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ナヨクサフジ

10年ほど前か、山中の集落近くの川の土手で初めてこのクサフジを見て以来、好きな野草の一つである。ヨーロッパからの帰化種でなんということもない野草だが、この周辺ではどこにでもあるというものではなかった。ナヨというのは弱、つまり弱草藤らしいが、穏やかな感じは受ける。

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こちらがクサフジ

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賤ケ岳

しずがたけ…と読む。柴田勝家羽柴秀吉との七本槍の戦いで有名な山だが、小谷城なり、姉川の合戦なり湖北は戦場地が多い。

昼から少しと登ってみたら想いもかけず快晴にて、遠方まで見晴らしよく、滋賀県中が見渡せた。

琵琶湖最北部

および葛籠尾崎

左端は竹生島

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山からの吹き下ろしの風か飯の浦湾には綺麗な模様が流れていた。

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余呉

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湖北平野部

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比良武奈ヶ岳

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賎ヶ岳よりの尾根続き

正面奥の山は山本山

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南方大津方面

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南方草津方面

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キンラン

ちょうど春の連休の頃から咲き出すからか、散歩の人に気付かれて掘り起こされたり、あるいは食性の変わってしまった鹿に食べられたりしてずいぶんと減ったキンランも、よく探してみるとけっこう残っている。一般の人に対しては、キンポウゲがカムフラージュになってくれているようだ。昔はギンランもあったけれど、さすがになくなって久しい。

f:id:Jiroviolet:20170520161710j:imagef:id:Jiroviolet:20170520161730j:imagef:id:Jiroviolet:20170520161751j:imagef:id:Jiroviolet:20170520161803j:image

ギンラン

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植物群落

以前から、一面のコマクサ群落…というような使い方をしていたが、生態学の定義では、群落とは…一定の地域に相互に関連を持って生育している異種の植物の集まり… となる。群生…という言葉を使った方がいいのかもしれない。

ノウルシ(トウダイグサ科

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ハマダイコンアブラナ科

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ナガミノゲシ(ケシ科)

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ジシバリ(キク科)

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スイバ(タデ科

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アメリカフウロフウロソウ科

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サワオグルマ(キク科)

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オオイヌノフグリゴマノハグサ科

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イチリンソウ(キンポウゲ科

奥のものはニリンソウが混じるf:id:Jiroviolet:20170513123537j:plain

ニリンソウキンポウゲ科

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トゲミキンポウゲ(キンポウゲ科

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ムラサキサギゴケ(ゴマノハグサ科

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Spring ephemeral

春先に花をつけ、夏まで葉をつけると、あとは地下で過ごす一連の草花の総称。

いつも春になると、すがすがしい気持ちでこれらの花々に出逢うが、足るを知るというか、潔さに感心してしまう。

カタクリユリ科

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トキワイカリソウ(メギ科)

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イチリンソウ(キンポウゲ科

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ヤマエンゴサク(ケシ科)

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ラショウモンカズラ(シソ科)

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ニリンソウキンポウゲ科

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セツブンソウ(キンポウゲ科

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春の琵琶湖岸

琵琶湖岸では四季を通して木々や草花の芽吹きや開花、結実、紅葉などが見られ、変化に富んでいて飽きない。

アカメヤナギ(ヤナギ科)とハマダイコンアブラナ科

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ノウルシ(トウダイグサ科

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葛籠尾崎より

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琵琶湖最北端の塩津湾

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高時川源流

 

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滋賀の最北端を流れる高時川は別名、妹川ともよばれ、同じく湖北の姉川と合流して琵琶湖へ流れ込む。上流には日本海要素と呼ばれる、雪に適応した多くの植物が分布している。

ユキツバキ(ツバキ科)

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ヒトリシズカ(センリョウ科)

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ハルトラノオタデ科

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ウスバサイシン(ウマノスズクサ科)

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ミズメ(カバノキ科)

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渓流沿いの新緑

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Indiansummer2

 最高峰グランドティートン峰 4197mを中心としたティートン山脈はアメリカの国立公 園の中で最も美しい景観と言われます。五十年以上ティートンの麓に住んでこられた老女がこん なことを言っておられます。 「私はヨーロッパのアルプスも見たし、ヒマラヤにも登った。南アメリカの山岳地帯も歩きまし た。けれど、ティトンの山には魂に響きかけてくる何か特別なものがあるのです。」

 めったに海外へ行かない私がこの年になり二度も同じ所へ行こうとした理由もそこにありま す。 ネイティブアメリカンの伝説にまつわるシューティングスターやインディアンペイントブラ シ、ブレージングスターや数多くの高山植物も見ることができ、充実した旅でした。

 琵琶湖の湖西に住んでいますが、周辺も含めた、四季を通しての植物や自然を紹介していきます。

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Grand Teton