友人の曹洞宗僧侶に、訪れた永平寺の正門、および山門に示されている書について教わったので紹介しておく
正門
杓底一残水 しゃくていのいちざんすい
汲流千億人 ながれをくむせんおくのひと
熊沢泰禅禅師の書
道元禅師が永平寺に住されたとき、毎朝門前を流れる谷川の水を汲んで仏前に供えられたが、柄杓の底に残ったわずかな水でも捨てずに下流の人のためにつつましやかに谷川に戻された。その徳を偲んでの言葉。
川に架かる橋の名も「半杓橋」といい、いずれもわずかな水でも大切に、そまつにしてはいけないとの教えに基ずく。禅では物を大切にし、人の目につかないところで人としてなすべき行いをする「陰徳を積む」修行を重んじる。
山門の聯(れん)に書かれている言葉
右側 【家庭厳峻 不容陸老従真門入】
かていげんしゅん りくろうのしんもんよりいるをゆるさず
右側=永平寺という家庭は、仏祖の家訓に厳しく従う。
どのような社会的地位のある人でも仏を求める心が無ければ、この門より入ることは許さない。
左側 【鎖鑰放閑 遮莫善財進一歩来】
さやくほうかん、さもあらばあれ、ぜんざいのいっぽをすすめきたるに
左側=そうであるが、この山門は鍵はかからず扉もない、入り口は常に解き放れている、善財童子のような道心があればいつでも、その一歩を進めて入れるようになっている。