秋の七草

 

 

山上憶良の 万葉集にある七草の歌

 

秋の野に 咲きたる花を 指折り(およびおり) かき数ふれば 七種(ななくさ)の花

 

萩の花 尾花 葛花 撫子の花 女郎花 また藤袴 朝貌の花

  

この中で、今の時代に一般の人が違和感を覚えるのは クズ だろう

山野を覆い尽くすように広がる姿を見ると、雑草どころか 悪草にすら見える

ただ、クズの花は次の写真のように、形といい、色合いといい、魅力的なものである

また、掘り起こしてさらに精製するまでが大変だが、葛粉になり、さらに葛根湯の原料でもある

昔の人は、悪い面ばかりに目をやるのでなしに、そのものの良い面に気付き、結果として恩恵を受けてきた

 

① クズ(マメ科

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②  ナデシコナデシコ科)

いわゆる大和撫子である

野生のカーネーション

茎は細くて すっきりとしているが 芯は強い

かくありたし

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③  ススキ(イネ科)

この植物を見て趣を感じるのは日本人だけではないだろうか

仲秋の十五夜には欠かせない

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④  ハギ(マメ科

これは今でもいかにも秋らしい花である

なお餅米と小豆で作る おはぎ だが

秋分の秋のものは おはぎ(萩から)

春分の春のものは ぼたもち(牡丹から) と呼ぶ

ハギには種類があるが 写真は ヤマハギマメ科

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山上憶良の歌のアサガオはキキョウのこと

今では自然植生はほとんど見られなくなったが

ずいぶんと昔、八ヶ岳の高原で キキョウやナデシコが一面に咲く姿を見たことがある

奈良時代はあのような感じだったのだろう

⑤  キキョウ(キキョウ科)

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⑥  オミナエシオミナエシ科)

千利休は茶花としては匂いを嫌って避けたという

ただ、姿は清楚な花である

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これは オミナエシ(女郎花) に対する

オトコエシ(オミナエシ科)

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⑦  フジバカマ(キク科)

これこそ今では自然植生はほとんどなく絶滅危惧種にあたる

昔は川の土手などに普通に生えていた

よく似たヒヨドリバナはいくらでもある

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フジバカマが咲く頃に必ず アサギマダラ がやってくる

この蝶は沖縄、奄美などの南西諸島まで渡っていくという

光るような浅葱色(あさぎいろ)がわかるだろうか

昔の日本人の感性というものに驚くばかりである

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さらに昔の人の感性に驚くのは 下は 

フジバカマの小花を一つ取ったものだが

フジバカマ(藤袴)の名前の由来がわかるだろうか

気付いた人はたいてい うわ〜 そうなのか〜 という人が多い

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なお、秋の七草といっても開花時期はまちまちで

西周辺では
キキョウ、ナデシコは7〜8月に、

クズ、オミナエシは現在で終わりかけ

ハギ、ススキは今から

フジバカマは一番遅く9月下旬頃から咲き出す