日本の滝百選にあたる長野県最南端の田立の滝を訪ねた。田立の滝というのは、不動滝、天河滝、霧ケ滝等、いくつかの滝の総称で、滝道を超えて最上部に不動岩があり、最上部までは思ったより標高差があった。普通、このような滝沿いの山道は滝の横の巻道を登るが、ここでは至る所に木製、鉄製の階段、吊り橋、桟道、橋が設けてあり、登山経験者でなくとも登れるようにしてある。ただ、ここの滝は巻道や桟道がなければ登山経験者でも登れないところが多く、よくもまあこれだけ整備してあるなあと、申し訳なくなる。ちょうど上部で鉄の単管を運んで整備している方に会ったので、お陰様で登ってこれたとお礼を言っておいた。今日は私の他には来訪者はいなかったと思う。
歩いていてまず気づいたのは、木曽の森だけに針葉樹の森だということで、行く前は、ここは岐阜県かと思っていたが、長野県最南端にあたる。木曽五木のヒノキ、サワラ、ネズコ、アスナロ、コウヤマキはネズコだけ気づかなかったが、他は全てあったと思うし、樹齢二三百年の大木も多かった。もちろん針葉樹だけでなしに、ケヤキ、トチ、ミズナラ、イヌブナ、ミズメ等の広葉樹も多い自然林だが、最上部の不動岩まで登ってここの森の成り立ちがわかったように思う。
天河滝
落差40mほどあり田立の滝の写真は大抵この滝のものが使われている
螺旋滝 少し道を外れて降りて行かねばならない
霧ケ滝
不動滝
不動滝下段
不動滝を横から
龍ガ瀬
ソウメン滝
途中一箇所不動岩の見える展望所がある
不動岩の標高は1300mほどある
途中にあった名前のついていそうな岩
不動岩より
恵那山方向
美濃方向
不動岩の真下は切れ込んでいる
恵那山
ところが.…
不動岩に座って食事をとったが、道がまだ奥に続いている。
少し歩いただけで、なんと林道に出た。
道沿いに花もあったので少し奥に歩いて行ったが、この道はまったく平坦でしかも
こんなものに出会った。
初めは広島の帝釈峡の雄橋のように自然のものかとも思ったが、そんなはずはない。
昭和の初めに人の手で掘ったものらしい。
ここに来てわかった。
この林道は森林鉄道の線路跡だと。まったく平坦な理由がわかった。
どんなところかわからないが、ずっと奥に天然公園があるとのこと。
さらに地形図を見てわかったが、ここの地形は登って来た滝道は急峻だが、上部はほとんど平坦になっている。
わかりやすく言えば南米のギニア高地みたいになっている。説明板だったか、どこかで準平原という言葉も見たような気がする。
この上部の平坦地は木曽の木々の主要な産地のひとつだったのだろうと思う。トンネル一つ見てわかる。
さらに歩いて来た渓流沿いの森は、おそらく五百年か千年かわからないが、人の手の影響を長い時間受けて来た自然林なのだろう。不動岩から見た森の林冠は主に針葉樹林だった。ずっと以前に行ったことがある、赤沢自然休養林こそ木曽ヒノキの主産地だろうが、気になって地形図を見てみたらやはり赤沢もほとんど平坦な土地である。御嶽山は火山であるが、この山の麓になぜこれほど立派な滝が多いのか、また準平原にあたるのかこのような山間部になぜ広い平坦部があるのか、推理のようで興味が出てくる。時間があれば奥の天然公園というところへ行きたかったが、今回は引き返した。
この鳥瞰図のような立体地形図でギニア高地のようなという感じがわかってもらえるかどうか
滝と森の成り立ちだけで長くなったので、田立の滝植物編を別に設ける。