何年か振りに天生(あもう)湿原を歩いたが、この森はなかなか先へ進めない。先ず登山口から亜高山帯の植物が出迎えてくれ、やがて湿原ではミズバショウやリュウキンカ、タテヤマリンドウやミツガシワなどの湿性植物が咲き、ゆっくり時間を過ごす。湿原を過ぎてカラ谷の原生林に入ると、林床に圧倒されるほどの亜高山植物が咲き、長い年月を経たブナやトチ、カツラなどの大木が空を覆い尽くす。屋久島や白神山地を訪れたことはないが、この森ほど奥深い生き生きとした森を他に知らない。ここでは大木ほど着生植物や蔓性植物を抱えており、それでもなにごともなかったように枝葉を広げている。これらの木々の姿を見ていると、自分たちの普段の考え方が間違っているように思えてくる。一年の半分は雪に閉ざされ厳しい環境のこの森がこれほど生き生きとしているのがなぜか考えさせられる。さらに進むと、圧倒されるほどのカツラの門が出迎えてくれ、所々ある残雪がタイムマシンの役目をして、早春の花々が未だに咲いていた。登山口から頂上の籾糠山(もみぬかやま)まで二時間もあれば登れるかもしれないが、朝一番に着き、木平湿原を廻って多くの人が訪れるようになった駐車場に戻った時は車は一台しかなかった。
それほど広くはないが、森に囲まれた静かな天生湿原
中之島(田形)の部分に祠が祀ってあり、奈良の飛鳥寺の仏像を彫った止利仏師の伝説が記してある
止利仏師の伝説
飛騨の匠の源にあたる
ミズバショウ(サトイモ科)
ツバメオモト(ユリ科)
ブナ(ブナ科)
林床の亜高山帯植物
サンカヨウ、ヤグルマソウ、ニリンソウ、マイヅルソウ、ズダヤクシュ、ハリブキ、キヌガサソウ、エンレイソウ、タケシマランなど
シダはクサソテツ(コゴミ)
ミミコウモリ(キク科)
オヒョウ(ニレ科)
サンカヨウ(メギ科)
登山路にあふれんばかりのサンカヨウ
クルマバツクバネソウ(シュロソウ科)
ヤマトユキザサ(ユリ科)
別名 ミドリユキザサ、オオバユキザサ
カツラ(カツラ科)
ブナの門
カツラ門
残雪
残雪のためこの時期に咲いている
ショウジョウバカマ(シュロソウ科)
ヤシャビシャク(ユキノシタ科)
木平湿原
籾糠山方面
木平湿原からカラ谷まではブナ林が続く
ムシカリ(レンプクソウ科)
最後に…
ミドリニリンソウ
これを見つけると幸せになれるとか…
花弁が葉から進化したことを教えてくれる花かと