鈴生り(すずなり)

 

今年はウワミズザクラの実がすごく目立ち、どの木を見ても鈴生りになっている。

例年、このようにたくさんの実をつけてもこちらが気付いていないだけかとも思えるが、おそらくブナの実が数年おきにたくさん実るように、今年がその年に当たるのだろうと思う。

樹木の果実は毎年安定して同じ量だけ実らせていると、ことごとく哺乳類や野鳥などに食べ尽くされてしまうので、その種全体として不作の年や、平均的な年、そして動物が食べきれないほど豊作の年をもうけて、子孫を残す工夫をしている。会話をしているわけでもないだろうに、全体としてしっかりとした連携を保っている。

 

ウワミズザクラ(バラ科

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果実は熟すにつれて緑から黄色、橙、赤、そして最後に黒になる

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小さい果実なのであまり気付かないが、この黒く熟した果実を割って見ると、白い種子が入っていて、この実を食べると、杏仁豆腐の香りがする

 

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杏仁豆腐はもともとは中国の薬膳料理で、字の通り、杏(あんず)の種子(正確には仁)を粉にして作ったものだが、ウワミズザクラもアンズも同じバラ科の植物で性質が似ており、また、市販されている杏仁豆腐は同じくバラ科のアーモンドの種子が使われている。

今年のようにウワミズザクラの果実が鈴生りになっても、このような小さな種子から杏仁豆腐は作っておれないが、香りを楽しむことはできる

 

ウワミズザクラの花期(四月)

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これでも桜の仲間にあたる(四月)

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ユウスゲ

 

 

盛夏を告げる花とでも言えるか、毎年梅雨明け間近の頃に涼しげな無駄を削ぎ落としたような花を咲かせる。

ニッコウキスゲヤブカンゾウなどとは違った蛍光色のような独特の黄色をしていて、青みがかった黄色とでも表現したらよいのか・・・

 

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ユウスゲという名の通り、夕方近くに咲き出し、未明には花を萎ませている

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他のユリたちとは異なり、1メートル以上はあるか、かなり長いしなやかな花柄を持っていて 、少しの風でもよく揺れる

夜行性昆虫に目立つようになっているのかもしれない


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鳴いているセミは ニイニイゼミ と ヒグラシ

 

半夏生

 

暦の上で今日が半夏生(はんげしょう)にあたる

梅雨の末期、農作業を休み、水や食に注意し、大雨に警戒する時期だが

カラスビシャク(烏柄杓)と呼ばれる薬草が、半夏とも呼ばれ、それが生える時期から半夏生の名前が来ている

ただややこしいことに、ハンゲショウと呼ばれる植物はもう一つあり、しかも同じこの時期に咲く

 

カラスビシャクサトイモ科)

これが半夏(はんげ)

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オオハンゲ(サトイモ科)

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ハンゲショウドクダミ科)

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葉の半分がおしろいを塗ったように白くなるのでハンゲショウ(半化粧)の名がある

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見様によってはきれいなドクダミ

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湿地に咲く植物

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双方のハンゲショウも漢字で書けばすぐに違いがわかるが・・ 

 

サツキ

 

今が皐月にあたり

逆の言い方になってしまうが、この時期にサツキは咲く

 

サツキ(ツツジ科)

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他のツツジの仲間に比べて葉がかなり小さい

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サツキは本来、川縁の水飛沫がかかるようなところに自生している

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これが本来の皐月晴れ

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ウツボグサ

 

田畑のあまり使われていない農道に、毎年ウツボグサが密生するところがある。

この花はたいていは数本、あるいは数十本くらいで生えていることが多いが、これだけ密生するのはあまり見かけない。

紫色のじゅうたんを敷いたような感じになる 

 

ウツボグサ(シソ科)

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両側に軽トラックの轍があるのだが、幸いこの時期は通らない

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ウツボというのは魚ではなく、弓の矢を入れていた器のこと

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群生・・・

よく帰化種のセイタカアワダチソウヒメオドリコソウが、空き地を一面におおっていることがあるが、それは人が何らかの関わりをその空き地に持ち続けているからで、イネやムギが田畑一面をおおっているのと同じく、また帰化種はそういった場所に特に適応した種にあたる。

ただ、このウツボグサのように、稀に群生しているのは人との関わりだけでなく、よほど生育に適した条件がそろっているのかと思える。

私はやらないが、山野草を育てている人は、そういったことを経験でよく知っているかもしれない。

ここは、田畑の横の農道で、時折軽トラックが通っていて、すぐ南側に河辺林がある。


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琵琶湖岸 初夏②

 

 

湖岸で花を咲かせていた木本をいくつか

 

卯の花の匂う 垣根に

ホトトギス早も来 鳴きて

 

まさに今がその季節にあたる

以前述べたように 卯月(卯の花の月)は 四月のことではあるが、時期的には五月にあたる

旧暦と現行の太陽暦とのずれだが、困ったもので、ますます季節感が狂ってしまう

 

ウツギ(アジサイ科)

卯の花のこと

ウツギの仲間はたくさんあるが単に ウツギ というのはこの花を指す

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このような感じから 卯の花(おからのこと)と呼んだのだろう

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普通はこのように枝が垂れ下がっていることが多い

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ニセアカシアマメ科

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このように大きなトゲがあるので ハリエンジュ ともいう

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童謡や歌謡曲に出てくる アカシア  はこの木のことだが

この木はニセアカシア (似せアカシア )で

本物のアカシア は乾燥地帯に生える樹木で

アフリカのサバンナでキリンがいるようなところのアンブレラアカシア ツリーと呼ばれる木

 

 

 

センダン(センダン科)f:id:Jiroviolet:20210603105819j:plain

 

この木も海岸性の植物だろうが、琵琶湖岸には多い

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このような青味がかった花が咲く

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センダンは双葉より芳し・・

響きのよい諺だが、そのセンダンはビャクダン科のビャクダンでこの木のことではない

南方熊楠が亡くなるときに オウチ が見える・・

と言ったそうだが オウチ はこの木のこと

琵琶湖岸 初夏①

湖岸は初夏にもっとも華やかになる。

ノウルシの群生のように春の盛りに咲くものもあるが、いわゆる早春・・と言われる時期にはあまり花を見かけない。

主に帰化植物が多いように思うが、海岸性の植物や、取り上げてはいないが、中には希少種が咲いていたりもする。

 


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動画の中で取り上げていないものを以下に挙げる

 

 

ノビル(ヒガンバナ科

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ドクゼリ(セリ科)

ドクウツギトリカブトと並んで三大有毒植物とある

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コゴメバオトギリ(オトギリソウ科)

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ナガミヒナゲシ(ケシ科)

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マツバウンラン(オオバコ科)

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ヒメヒレアザミ(キク科)

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ミツバツチグリ(バラ科

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ヒナギキョウ(キキョウ科)

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セイヨウヒキヨモギ(ハマウツボ科)

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屏風ケ滝② 植物

 

やはり草本、木本とも花々には遅すぎたが、その代わり新緑がきれいに展開していた。

この渓流にはケンポナシが多い。また、イタヤカエデ、コハウチワカエデなどカエデの仲間やサワグルミも多かった。

カエデの仲間を ムクロジ科 と分類しているが、これはDNAを基準にした新分類体系で、どうもあまり馴染まない。ユリ科に入っていたオオバギボウシも キジカクシ科 と言われても困ったものである。ただ、DNAをかざされると、水戸黄門の印籠のようなもので、どうしようもない。

なお、チドリノキ というのが出てくるが、これはカエデの仲間には見えないと思うが、正真正銘カエデの仲間である。例によってキジカクシ科ではあるが・・・

 

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屏風が滝① 滝

 

久しぶりに訪れてみたが、記録を見ると三年ぶりになる。その間の台風や大雨のためだろう、大きな木がけっこう倒れており、中には登山道を塞いでかなり歩きにくいところもあった。もともとこの滝への道は鉄の橋や石段などよく整備されているコースだが、最近は災害が多く手が回らないののだろう。全国の林道や登山道も同じ状況かと思える。

ただ、滝は以前のままで何も変わらない。

解ってはいたが、スミレやツツジなどの花には遅くなってしまった。

 

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なお、タゴガエルは土や石の中の空洞で声を反響させているため、姿は見えない。

静寂の湖

 

驚くばかりの早い時期の梅雨に入って間もなく、激しい降雨の合間に、琵琶湖は静寂の湖面を見せてくれた。

朝凪、夕凪は琵琶湖でもある。

ただ、昼間はあまり凪いでいることは少ないのだが、これは昼間の景観である。 

 

  

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高時川源流 ②植物

 

この源流域は植生が豊かで、歩いていて数多くの植物と出逢える。

ただ、県内ではもっとも降雪量が多く、春の訪れが平地より半月かひと月近く遅れることもあり、厳しい環境には違いない。伊吹山地のように地質が独特で植生が変化に富むわけでもないのに、これだけの植物が生育しているのは、その厳しい環境の故のように思える。

この高時川源流には1980年頃から、丹生ダムという、ロックフィルダムとしては日本第一位の規模を持つダムの建設が決まって、進められていた。住民の移転も済んだ後で、数々の変遷はあったものの、2006年の知事選挙後、方向性が変わり、最終的に2016年にダム建設中止が決定されている。

予定されていたダムの貯水量は1.5億立方mで、琵琶湖の貯水量は275億立方mである。

京阪神への利水、及び流域を含めた治水とのことだったが、どんなものだろう。

県内でももっとも優れた植生の地域だが、源流に沿って旧集落を結ぶ道路が続いていて、その道路壁にも豊かな植生の植物が生育している。一面のイワタバコやオオバギボウシの岩壁が見られたし、名前は挙げないが希少な植物も数多く生育している。

ただ、最近また工事が始まっていて、いつの間にか道路が拡張され貴重な植生の道路壁は削り取られてしまっていた。すでにすべて廃村になってしまった集落をつなぐ道路だが、何のための工事かわからない。ただ、通行止めになっている。

 

貴重な植生の壁面

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一面のイワタバコが続いていた

これらの壁面は削り取られて今はもうない

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高時川源流 ①風景

景観の優れた所はたくさんあるが、ここは植生の豊かさとともに景観が作られているところで、特に春や秋の植物の移り変わりとともに変化してゆく多様性に富んだ地域である。

川というものは血管のようなもので、流域に降った水を集め、下流域に恵みを運び、いつも巡ってやまない。

穏やかな川の流れを見ているのは気持ちがいい。

 

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姉川上流 新緑

 

 

山々の木々は、芽吹き、開花から、新緑そして深緑へと移り変わってゆく。サクラやコブシの開花は当然だが、この時期には、ナラの銀色や、イヌブナの黄緑色など新葉の芽吹きや深緑の色によって遠目にも木々が識別できるものも多い。褐色がかったものや、赤味がかったもの、黄色味を帯びたものなど色々あるが、緑だけでもよくもこれだけの色があるものかと感心する。

 

 

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キンラン

 

昨年に続いて、今年もたくさんのキンランが咲いてくれた。近くにクヌギやコナラの林があって、数年前から落ち葉をかき集めたりしていた。そのことが関係したのか、あるいは以前から生育していたものの気付かなかったのかは分からないが、年々増えてきたようにも思う。

ラン科の植物は、キク科の植物と並び、進化の上ではもっとも新しく出てきた植物で、菌類と共生することで発達してきた。キンランも最近は数が減って、絶滅危惧種に入っているようだが、もしかするとキンランはランの中でも、里山、いわゆる人間の手の加わった環境に適応してきた種類なのかもしれない。いわゆる深山でキンランを見かけたことはない。

 

キンラン(ラン科)

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写真に撮った個体ではないが、同じ林の道路脇に9株のキンランが密生しているところがあった。あまりに多かったので正確に数えて覚えている。

少し心配したが、写真の通り、ゼンマイの葉が隠してくれていたり、ウマノアシガタキンポウゲ科)の花がカムフラージュになったりで、まあ、大丈夫かと思っていたが・・・

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連休後の朝、見てみると9株すべてなくなっていた。

一見すると分からない感じになっていたが、よく見てみると

ことごとく掘り起こした跡があった・・・

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犯罪でもないだろうし、処罰もされない事象だが、一応絶滅危惧種である

智恵を絞って札を立てておいた・・・

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