水上勉の小説「桜守」の最後に出てくる清水(しょうず)の桜…
同じエドヒガンザクラでも、先日とりあげた酒波寺の行基桜や深清水のお墓にある夫婦桜など、大きさでは劣るが、歴史があり存在感のある桜である。すぐそばを小川が流れていて、この桜もやはり墓の片隅にある。
ずいぶんと以前のことになるが、染色家の志村ふくみさんが桜の花の色を出したいとさんざんやってもだめだったようで、ようやく湖西にある桜の枝を、しかも開花直前のものを分けてもらい試したところ、鮮やかな色が出たとのこと。その時期のものでしか出ないと言われていたと思う。もしかするとこの清水の桜、あるいは少なくともこの地域のエドヒガンザクラのことだろうと思う。
樹齢三百年以上とあるが、たしかに一部は弱ってきて幹が折れていたり、樹木医による治療の跡が何箇所かある。この地域にある他のエドヒガンザクラの巨木と同じく以前はもっと枝を広げていたことだろう。
毎年この桜の下の墓のそばにトウダイグサが咲く。独特の形と色あいを持つ植物だが、トウダイというのは灯台ではなくいわゆる燈台(しょくだい)のことで形を見れば納得できる。
清水の桜のすぐそばに奥田沼という沼があって、ここに近くの小学校の生徒が植えて整備している木々がこの時期に芽吹いたり、開花したりする。
コブシ(モクレン科)
タチヤナギ(ヤナギ科)
カツラ(カツラ科)